アリス・マンローの短編、女たちを読み終える。「林檎の樹の下で」はむずかしくて挫折したが、こちらはおもしろく読んだ。驚くような展開はない。奇抜な人物がでてくるわけでもない。それでも濃密な読後の余韻があったのは、ほんのちょっとした嫌な感じだとか小さなすれ違いを逃すことなく描いた密度の高さ。丹念な心理描写がたまらない。
夜の満月は確かに派手だった。
明日から約1年ぶりの旅行。長崎、熊本、鹿児島、佐賀、福岡を9日間でまわる。冷蔵庫の中はできるだけからっぽにした。
アリス・マンローの短編、女たちを読み終える。「林檎の樹の下で」はむずかしくて挫折したが、こちらはおもしろく読んだ。驚くような展開はない。奇抜な人物がでてくるわけでもない。それでも濃密な読後の余韻があったのは、ほんのちょっとした嫌な感じだとか小さなすれ違いを逃すことなく描いた密度の高さ。丹念な心理描写がたまらない。
夜の満月は確かに派手だった。
明日から約1年ぶりの旅行。長崎、熊本、鹿児島、佐賀、福岡を9日間でまわる。冷蔵庫の中はできるだけからっぽにした。
「堀江敏幸 なずな」を読み終える。400ページを超える分厚い本だったけれど、読み終えて思うのは、都会から出戻った独身男のイクメン物語のところはぜんぶすっとばして、カレーピラフをつくりたくなる小説ということ。
なずなが眠っているあいだに、タマネギ、ピーマン、舞茸、豚こま、それから残しておいたブロッコリーの茎を冷蔵庫から取り出して、昨日の深夜、ベーコンを焼いたフライパンにこびりついて白く固まった脂をそのまま使い――つまり、洗ってなかったということにすぎないのだが――、細かく刻んだ右の食材を投げ入れて炒め、そこに米を加えてさらに炒めてから、なずながここへ来る前に買ったやや古めのカレー粉を入れてまた炒めた。ベーコンの脂があるのでバターは我慢することにして、それをざっと深鍋に入れ、米と同じ分量の水を加えて火に掛けた。塩も、ちょっとだけ入れた。要するにカレーピラフである。装丁がいいなと思ったら著者自装だった。
クラウドワークスで20分の5までのこったバナーは結局だれも採用されることなく終わるという白けた結果になり、応募者全員に金は均等に分配された。ちょっと腑に落ちない。それでもまたきょうもパンフレットを提案した。報酬にありつけるかは別として、やりたい仕事だけを選べるのはまあ面白いところもある。
本屋で芥川賞を特集した文藝春秋を立ち読み。今回突出した作品はなく、ひとつに絞るのがむずかしかった。と、選考委員のもごもごしたものいいが並ぶ中、村上龍だけは受賞作を趣味的で無意味な洗練、"「"という記号がでてきた時点で興味を失ったと強く意見していて、ここまではっきりいう村上龍は偉いような気がした。今、村上龍に絶賛されることは、あまり嬉しいことではないだろう。ださくてかっこいい村上龍は健在だったし機能していた。今号には「柴崎友香 - 春の庭」がまるごと収録。
モンタージュで、明日の演奏のための公開リハーサル(ヴァイオリン:谷本華子 ピアノ:塩見亮)を見ながらビールを飲む。VIP気分。
二条の住宅街にある森林食堂でカレーを食べた。とてもおいしい。内装も凝っていて、緑色の壁と南国風のインテリアと謎の情熱を感じるミッキーマウスの手作り人形が開放的なムードをつくっていた。お店のお姉さんも気さくすぎる。
ライブが終わったあとの握手会で、オフになった大森靖子を間近にみたけど、その姿や振る舞いは26歳の華奢な少女という感じで、進化する豚感などまるでない。職業ブスと自称するにも無理がある。むしろブサイクな写真こそわざわざつくっているのだと私は確信したかわいい。
— シワプリ (@siwapuri) August 17, 2014
終演後は握手会のようなものが当然のように始まり、大森さんは一人ひとりクソ丁寧に対応をしていて恐ろしかった。客のほぼ全員が並んだので、1時間待くらい待ったけど、サインとか写真とか握手できて楽しかった。
いつものようにレコードを売ったり買ったりと、ちまちまごそごそ。買ったのは、2枚。斉藤哲夫「君は英雄なんかじゃない」のオリジナル。コンディションがよくないとはいえ200円だったら買うです。リイシューはすでにもっていたけれど、あれはシングルジャケットだったので、この2色印刷の見開き仕様がうれしい。もう1枚は友部正人「誰もぼくの絵を描けないだろう」。こちらも安かったので、つい2枚目の購入。アートロックにて。
はじめての獅子文六を読み終えた。これがベストではないというかんじで、あまり深みはなかったけれど、1962年の言葉の新聞小説であっても軽いテンポですらすらいけたのはよかった。
見積もりを作ったり、キンコーズで名刺をつくったりもした。
CD制作の方はすべて無事出稿までいきついた。ジャケットの仕様がE式からA式に変更になるなど、ばたばたしたがやることはやったという感じ。ブックレットのほうは、めんどうな面付けも久しぶりにした。音楽関係に特化した印刷流通会社の担当営業はかなりフランクで、ビジネスライクな言葉を想定していたぶん調子が狂う。営業も商材によって人種はかわるものなのだ。
また樟葉まで行く用事ができた。ちょっとした仕事ではあるがありがたい。
カレーをつくろうと、玉ねぎを切って茶色くなるまで炒めたが、ルーがなかった。
in the cityに掲載されていた短編小説「大人しか判ってくれない - 桜井鈴茂」の一節に苦笑する。
「父の趣味はレコード蒐集と転職および失業、みたいな。甲斐性なしの父親、唯一の財産はレコード、みたいな。」みたいな。
夕食は、冷奴、餃子、焼きそばを台所で立ち食い。一人でビアガーデンのようなメニュー。汗だくになりながらウィスキーも飲む。食べ過ぎた。
DOMMUNEで、エー ユ ア オー こと、MUROのDJとロイ・エアーズの演奏をきいていた。DJ MUROはすごすぎてなにがどうなっているのかよくわからない。続く、DJ NORI のプレイはホームリスニングにも馴染むいい曲がきけた。ダンス甲子園でよく使われていた曲は懐かしすぎる。
蒸し暑い1日。またヤフーへレコードを売りにだす。みたいな。
フライパンで作る焼きそばというのを初めて作った。乾麺を煮詰めて生麺になったものを炒めるという三変化。地味にすごい。
WordPressのページリンクがなぜか404になってはまりまくる。不具合の原因はクエリーポストとWordPressの投稿表示数。
夜からCDとレコードをもって100000tへ。フェデリコ・モンポウやクシシトフ・コメダ、フランシス・ベベイなどを売って、買取金額は3500円。そのお金で、獅子文六の文庫本や、雑誌とレコードを買う。20時からは、カフェ・モンタージュでの公演 G.フォーレ:ピアノ五重奏曲 第1 番・第2 番。ステージも観客席も人でいっぱいだった。年齢層はいつになく高め。曲はちょっとつかみどころがなかったけれど、弦楽器の音の重なりがきれいで高揚感もあった。終演後、振る舞われた日本酒を飲んで帰る。
Cafe MONTAGEの公演予約を2ついれた。
夕方から実家へ。食事をしたりプラバンを焼いたり。7.16(水) G.フォーレ: ピアノ五重奏曲 第1 番 ニ短調 作品89 (1895) ピアノ五重奏曲 第2 番 ハ短調 作品115(1921) ヴァイオリン:長原幸太 ヴァイオリン:佐久間聡一 ヴィオラ:中島悦子 チェロ:上森祥平 ピアノ:大井浩明
8.3(日)「飛天の舞」上森祥平×J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会 第1部(15:00開演) □ I. フェデレ: 虹(2004) ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007 □ H. プスール:「あなたのファウスト」のエコーⅠ(1965) ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ 組曲第3番 ハ長調 BWV1009 □ B. ブリテン: 無伴奏チェロ組曲第3番(1971)より パッサカリア - りんごの木の下で、秋、灰色の鷲- 聖人たちとの安息 ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011 第2部(18:00開演) □ J. シェンク: アリア・ ブルレスカ(c1705) ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV1008 □ R. スマート: ああ、私にひどいことをしないで(15??-after1630) ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV1010 □ S. ビーミッシュ: 利口な娘(1998) ■ J.S. バッハ: 無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV1012
坂本龍一が中咽頭がんだとTwitterで知った。坂本龍一というのは、有名曲はたくさんあるけれど、決定的なアルバムというのは何になるのだろうか。意外とないのかもしれない。手元にあるのは未来派野郎とB-2UNIT。
ヤフオクでは出品と落札。ちまちました商い。しかし重要な収入源。ためこんでいた梱包資材が活躍。涼しくて過ごしやすいクーラー要らずの1日。夜、鈴木清順監督「殺しの烙印」を観た。妖艶な真理アンヌがみものだった。
雨がふる前に買い物を済ませたかったが、昼前からずっと雨。また明日。
映画『ノーコメント by ゲンスブール』を観た。断片的な映像をつなぎあわせていく編集の力がすごい。
映画 シュガーマンを観た。アメリカでは忘れられた男が、南アフリカではスターになっていた。ということなど、ロドリゲスの COMING FROM REALITY を買った時にはしらなかったので大変興味深かった。突然スターに祭り上げられても、決して浮かれたりしないロドリゲスはかっこよかったが、商業的に失敗しアメリカ音楽界から消え去ったいうわりに、COMING FROM REALITY はそこまでレアなものではないと思う。南アフリカ以外では無名というより、南アフリカで特に人気があったというのが実際のところなのではないか。ロドリゲスのレコードは手放してしまったけれど、映画の中で歌詞をみながら聴いていたら惚れた。Rodriguez - I Wonder
レンタル屋でDVDを借りたら、「この映画は以前にもレンタルされたことがありますが、よろしかったでしょうか?」と聞かれて、一瞬なんのことだかわからず戸惑った。ほっといてくれ…。
100000tでFREDERIC CHOPIN THE COMPLETE WORKS performed by Polish Artistsを買う。ショパンの20枚組BOX。ポーランド ロマン・ポランスキー 戦場のピアニスト ショパン アンネの日記という流れ。
夏の終わりのような激しい通り雨が2回あった。
引き続き通販カタログ修正対応。
烏丸御池で待ち合わせをした後、カフェで軽く食事をしてカフェ・モンタージュへ。今回の演奏曲はフランス近代の音楽 プーランクとドビュッシー。
チェロ:金子鈴太郎ああ、この曲はこの人のものだったのか。という有名な曲が前半にあった。もっとも感動したのはピアノとチェロ用に編曲したというプーランクのチェロソナタ 25分。メロディーが現れたと思ったらすぐ違うところに行っている。と、演者による前説どおり明るい朝の輝きがあった。全身で表現するようなチェロ演奏の身振り手振りと、軽やかに手を高くあげて弾くピアノ演奏にも目が行く。そして関西弁の金子さんのMCはとても気さくで熱意があった。
ピアノ:稲生亜沙子
プーランク:チェロソナタ、フランス組曲
ドビュッシー:チェロソナタ
会場はきょうも満席で、開演ギリギリに到着した我々は階段に座って観た。
わたせせいぞう、永井博、鈴木英人らがつくりだしたあのイメージは、大滝詠一「ロング・バケイション」、山下達郎「FOR YOU」のこともあり強固にやきついている。
輝ける80年代の日本には、わたせせいぞうがいた。そして、いまもいる。このことの意味は、大きい。ひきつづき通販カタログの制作。だいぶ慣れてきた。
伊勢丹の地下で食料品を、ワルダーでパンを、帰宅してボロネーゼを作って、また通販カタログの修正にかかる。
住民税の通知が着た。今回は32,000/29,000/29,000/29,000。売りに出していたレコードは5000円で売れて喜んだがそんな瞬間もむなしく税金に消える。
御池通を東に走って100000tへ。買い取ってもらったもろもろは9000円。the band - last waltzを500円で買う。
通販カタログ制作はさらなる依頼があって、3見開き追加となった。
深夜から飲みにでかけることになり、カフェとバーとラーメン屋でいろいろと話し込む。新聞配達員が朝刊を配るころ帰宅。午前4時就寝。きょうは月曜日。
手回り品の持ち込みや保管は、お客さまご自身でお願いします。上記をみるかぎり台車にダンボール二箱はサイズ・重量以内なので、混雑していない電車であればオッケーなのではないか。
また、混雑している列車など運輸上支障が生じるおそれがある場合は、車内への持ち込みをお断りする場合がありますのでご了承ください。・無料で車内へ持ち込めるもの
縦・横・高さの合計が250cm以内で、重さが30kg以内のものが2個まで。ただし、長さは2mまでに限ります。
運動用具、娯楽用具、楽器などは、長さの制限を超えても、専用の袋、ケースなどに収納し、車内で立てて携帯できるものは無料で持ち込めます。
http://www.keihan.co.jp/traffic/ticket/dunnage.html
帰宅後、自宅で昼食をすませたあと、京都駅ちかくの制作会社での打ち合わせ。カタログ作成の共同作業。
深夜元同僚とスカイプで電話。27時就寝。
Nothing to compile. If you're trying to start a new project, you have left off the directory argument. Run "compass -h" to get help.原因はわからないままコピペのし直しなどで乗り切れたが気持ちは悪いまま。
jQueryのレファ本を見ながらサンプルをいろいろ打ち込んではみたが読み進めるに連れこれをいちから作り上げるのは自分には難しすぎると実感する。カスタマイズして使うのが現実的。ある程度わりきったほうがよさそう。
中古レコード店の店主に、カートリッジ買いませんか?と持ちかけたり、3日目のカレーを食べたりして今日も乗り切る。
明日は大阪まで納品にでかけるのと、京都の事務所で打ち合わせの予定がはいった。indesign案件とのこと。
カフェ・モンタージュでの弦楽三重奏は、モーツァルトのディヴェルティメント 変ホ長調 K.563。演奏が始まる前に、オーナーの高田さんから50分の大作であること、晩年の作品であることが告げられ、水を飲むなら今のうち、今ならもってさしあげます。と、長い作品であることが強調される。身構えるように演奏を待った。会場満席。
ヴァイオリン:田村安祐美どんな曲かは知らず、もちろん初めて聞く曲だったけれど、演奏が始まってすぐに高度な技術を要する曲ということが感じられた。何かすごいことを軽々とやってのけている。それでいて音色は明るくとても気持ちがいい。まったく退屈することなどなかった50分間の快感だった。
ヴィオラ:小峰航一
チェロ:上森祥平
印刷注文していたパンフレットA4三つ折3000部が届いたが、予想以上の量と重さで玄関が通れない状態になってしまった。水曜まで続く。
WORKSHOPにもちこんだレコードの買取金額は3300円。そのお金は かぜのね でのインドイベントで使おうと思っていたが、目当てのインドレコードコーナーには先客がおり、順番を待つのも辛い雰囲気(ちいさな会場は子持ちのママ友たちでぎっしり)なので見物だけでにとどめた。隣のナミイターレとドマノーエは前にきたときよりももっとわけがわからなくなっていた。ここは出町の吉田寮。美大生のたまりばのような雰囲気で、すこし懐しい気持ちにもなる。
善行堂では佐藤泰志 移動動物園の単行本を見つけた。けっこう高かった3500円。
器の修理を依頼していた左右から作業完了の連絡があったので若王子のお店までいく。欠けた部分はばっちり漆で埋まっていた。川角さんとお酒の試飲をしつつ雑談。これでこの器も例の「ストーリーのあるモノと暮らし」の一品になった。どうもありがとう。
夕方にもなると天気はすっかり晴れていた。三条のブックオフでは、古本屋でみつけたものの買い逃していた堀江敏幸 - なずな 760円と、古本屋ではなぜか見つけられなかったベルンハルト・シュリンク - 朗読者 を100円で買う。
出町商店街の八百屋ではらっきょを1袋400円のつもりで買い求めたが、実は1400円でした。ということがあり、一瞬固まってしまったが、そんな俺をよそに「これはいいもんでっせー」と、店主のじいさんが絶妙のタイミングでかぶせてきて、やっぱりいいですとはいえない流れのまれて普通に買った。徳島産のらっきょ1キロ。これはいいもんでっせー。帰宅後さっそく甘酢に漬けた。
「はじめて聴いてショックを受けたビートルズの曲はI should have known better(恋する二人)」脳梗塞で倒れてから声を聞いたのははじめてだったけれど、とてもお元気そうでよかった。「十代で初めて人前で歌ったときのことは、すごい歌をうたう女性と出会ったこともありよく覚えている。五輪真弓だった」
「メジャーにいって給料をもらうようになってから曲をかかなくなっちゃった」
レンタル屋にいったら旧作5枚500円セールだったので、ロマンポランスキー、アキカウリスマキ、パクチャヌクの監督作品を借りる。
ようやくサイトが公開になった。ひさしぶりに涼しい日。
テキストリンクの表示はされているのにクリック出来ない。という現象に4時間ほど悩んだが、終わってみればz-indexが原因だった。
もういちど自転車で御池までいって今度は森山威男カルテット@RAGを観る。会場にはおじさんらしいおじさんがたくさんいた。遠方からの常連も多い。森山威男は北島三郎と似ている。演奏はピアノの田中信正と森山威男とのインタープレイがなにより素晴らしかった!
きのう買った世界の巨匠たちシリーズ(Great Recordings of the Centry EMI Angel)は他もよいはずと思い、コルトーのショパンも買った。
ジェイムス・テイラーのタンガリー3部作を久しぶりに聴き返してみたがとくになにも感じられなかったので、ゴリラもあわせまとめて手放す。Appleからの1stだけが好きで、なぜか3枚も持っている。
夜、高校の先生から連絡があり、森山威男カルテット(川嶋哲郎(Sax)田中信正(P)加藤真一(B)森山威男(Ds))のチケットをいただく。寺町今出川 燕燕で食事をしながら、「森山威男はレコード屋で高い値段をつけてかざってあるのを見たことだけあります。聴いたことはないんです」というと、じゃあ、予習しといたほうがいいね。CDRやいてくるよ。と、また明日も会う約束をする。わたしもなにかやいていきます。
深夜、佐藤泰志 - そこのみにて光輝くを読了。89年の作品とは思えない鬱屈した閉塞感が描かれているが、その中での日常もある。悲痛という印象はなかった。拓児が姉をかばって起こしてしまった暴力事件の結果は、考えられる限り残酷な結末を示唆しつつ、当事者同士でのみ個人的な範囲で収まるところにこの小説のテーマがはっきりと感じられた。救いようのない絶望を与えない代りに、土地を離れて新しい仕事に就くことも許さない。逃れられない過去と土地と共に息を潜めて生きていく。